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里地里山保全活動
(財)イオングループ環境財団の里山保全事業
第11回「里地・自然エネルギー学校」

平成12年3月24日〜25日
埼玉県小川町


 今回の里地・里山保全活動のテーマは「自然エネルギー」です。
 太陽の光、植物の力、微生物の力を借りて、使う人が作り、メンテナンスもできる等身大のエネルギーについて体験しようという企画です。埼玉県小川町の「小川町自然エネルギー研究会」に、全国各地から、地域づくりを実践する人たちが集まりました。

小川町自然エネルギー研究会

 最初に見学したのは、有機農業の世界では知らない人がいない金子美登さんの霜里農場です。金子さんは、「有機」という言葉がまだほとんど知られていなかった1970年から有機農業に取り組みを続けてきました。少しずつ回りに理解者があらわれ、また、金子さんのもとで有機農業を学んだ人が小川町に定住したりして、現在は約20世帯が小川町有機農業生産グループをつくり、それぞれ有機農業を続けています。
 1991年、桑原衛さんが代表を務めるバイオガスキャラバンの国内プラント第一号が小川町の田下隆一さんの農場に建設されます。さらに、1998年には太陽光発電を推進し、自然エネルギー事業協同組合レクスタの専務理事でもあった桜井薫さんが小川町に移り住みます。有機農業と自然エネルギーは、そもそもの発想が同じところにあります。1996年、小川町自然エネルギー研究会が小川町の有機農家、学校の先生や職人、芸術家、そして、自然エネルギーに詳しい人たちを中心に発足したのも自然な流れでしょう。
 現在は、「自然エネルギー学校」を毎年開催しています。この学校は、理論ではなく、実際に技術を身につけ、かつ、教える人は、太陽光発電やバイオガスなどの設備が、学校を通じて手に入るというしくみです。毎年、全国から参加者が集まり、毎回20人から60人ぐらいの規模で、バイオガスの設置やガラス温室建設、炭焼きや稲藁の利用方法などの講習会が開かれています。テーマとしては、このほか、太陽光発電、廃食油燃料などがあります。
 また、地域ぐるみの取り組みとして、小川町とともに、ふたつの自然エネルギー活用地域づくりを検討しています。ひとつは、生ごみなどからメタンガスと有機肥料を生む「ぶくぶくプラン」で、もうひとつは、廃食油をディーゼル燃料にし、かつ、遊休農地で菜の花を栽培し、菜種油をとろう、そして、里山の景観保全もしようという「菜の花プラン」です。この計画は、環境省の地球温暖化対策実証実験地域予備調査事業として、2000年3月、環境庁(現、環境省)に提出したものです。

霜里農場見学

 霜里農場には、有機農業を学ぶ人が住み込みで研修にきます。1年間かけて有機農業の基本を学び、全国、全世界に散っていきます。見学したときも数名の若い研修者が、仕事を続けていました。
 霜里農場は、田んぼ1.5ヘクタール、畑1.3ヘクタール、山林1.7ヘクタール、乳牛2頭、鶏200羽で、米、麦のほか、野菜を年間80品目栽培しています。そして、60km圏内に住む人たちと、各家庭ごとに直接提携しています。
 1年中見学希望が押し寄せるため、月に1日、見学日をもうけています。今回も、この見学日に合わせ、他の見学者とともに農場を回りながら金子さんが説明してもらいます。ただ、今回は、「自然エネルギー」がテーマなので、そこに力点を置いての説明です。
 霜里農場には、太陽光発電設備とバイオガス設備があります。牛がいるためバイオガスのもとになる「糞」は手に入ります。できたガスは火力として使用し、ガスを生む過程でできる液肥は、霜里農場の野菜作りに使われます。農場の中で作物と肥料の循環だけでなく、エネルギーとしての循環もそこに加わっています。
 太陽光は2つの設備があり、ひとつはバイオガスやハウスの補助用に使われ、もうひとつは、合鴨の電牧柵に使われています。電牧柵は、弱い電力でかまわないため小さな太陽光発電パネルと小さなバッテリーだけです。
 また、廃油トラクターもあり、近づくと天ぷら油のにおいがするそうです。今回は時間の都合でそのにおいを体験できず、残念でした。
 霜里農場と小川町の有機農業については、一言で表現することはできません。今回は自然エネルギーについてだけですが、有機農業そのものが自然エネルギーの有効な活用技術のかたまりです。
 小川町の有機農業については、小川町有機農業生産グループによる『おがわまちの有機農業』という小冊子があります。一度、見学してみてはいかがでしょうか。
目次
里地里山保全活動
里地里山保全活動
00 里地里山保全活動とは?
01 秋田県鳥海山
ブナの植林
02 愛知県美浜町
竹炭焼き
03 島根県三瓶山
山地放牧と野焼き
04 長野県飯山市小菅
山の手入れ
05 三重県鈴鹿市
石組み
06 山形県最上町
地元学 (小学生版)
07 岩手県西和賀郡
地元学 (地域版)
08 北海道白滝村
水路と有機農業
09 神奈川県横浜市
ケビンの観察会
10 埼玉県武蔵野台地
落ち葉掃き
11 埼玉県小川町
自然エネルギー
12 新潟県佐渡島新穂村
棚田の復田
13 秋田県二ツ井町
杉の活用
14 三重県藤原町
里山テーマパーク
15 宮城県田尻町蕪栗沼
冬期湛水田
16 京都府綾部市
ふるさと拠点
17 沖縄県恩納損村
かまどづくり
18 神奈川県横浜市寺家町
ふるさと村
19 千葉県印西市
都市の里山
20 まとめのシンポジウム
バイオガス(畑と家畜小屋のそば)
バイオガス

 有機物の発酵によって、家庭用や動力用の燃料となるバイオガスを生産し、かつ、肥料効果が高く、土壌改良や病害虫防除効果があるバイオガス液肥をつくる技術です。
 バイオガスの熱量は、1立方メートルあたり5,500〜6,500kcalとなり、商業エネルギーなみの良質なガスです。この技術は、とくに発展途上国の農村で家畜がいて、自給的な農業を行っている場合、肥料と燃料が自給でき、循環できることから受け入れられています。家庭用バイオガス施設は、中国で500万基、インドで126万基、ネパールで6万基(いずれも1991年時点)となっています。詳細は、『農業技術体系』(農文協)をご覧ください。
 
太陽光発電(電牧柵利用)
太陽光発電

 太陽光発電には、大きく独立系と系統連系があります。系統連系とは、電力会社の電力と連動していて、家庭の中などで、購入電力の一部を太陽光発電におきかえるという発想です。独立系は、電気のきていない畑や山、海の上など、これまで電気のなかったところで電気が作り出せ、活用できるという意味を持ちます。自然エネルギーとして、独立系にはより多くの可能性があります。
 今回の見学でも、電牧柵への利用や農場での補助的使用などを見ることができました。また、水を引くポンプの電力や、畑に散布するための電力などにも活用できます。海外であれば、電力のない地域で、部屋の中に明かりを持ち込めるという強みがあります。
 動力部分がないので、バッテリーを使用しても、メンテナンスが比較的簡単だという特色があり、インドネシアの農村地域などでは、NGOなどによる普及活動が行われているそうです。
 




ワークショップ「小屋をつくろう」
 25日のテーマはふたつ。ひとつは、移動式かわら屋をつくることです。釘を1本も使わず、木組みと、紐だけで小屋をつくる技術で、組み立て2時間、撤去2時間だとか。かつて日本にあった技術で、かわらの番屋として使い、雨で水かさが増すとすぐに撤去して、水が引いたらまた組み立てて使ったそうです。ここで私たちが学ぶのは、間伐材の有効利用や、木組みという技術、そして、もうひとつ、柿渋という技術です(後述)。さて、この小屋のどこが自然エネルギーなのでしょう。
 小川町自然エネルギー学校の「自然エネルギー」には、藁や間伐材など、農業や林業資材を有効に活用し、使い終わったら、ふたたび地域の中で資源の循環として利用するという伝統的な技術も含まれているからです。たとえば、草鞋(わらじ)や、筵(むしろ)づくりなどもそのひとつ。
 燃料、動力源だけがエネルギーではありません。地域の自然から得たものを生活の中で使用し、また、自然のサイクルに循環させることがすべての基本なのです。
 もうひとつは、木質バイオマスエネルギー利用のひとつとして、ペレットストーブのデモンストレーションです。ペレットは、間伐材、剪定枝、バークなどを利用し、それを小さく粒状に成形した木質燃料です。圧縮成型することで、長期保存、輸送、安定的な熱出力ができます。スウェーデンで使用がはじまり、地域暖房施設や家庭施設として導入されています。今回は、スウェーデンから輸入したペレットストーブのデモンストレーションと、その点火用電力を供給する太陽光システムのデモンストレーションを、小屋をつくる横で体験しました。
 小屋づくりについては、参加者全員が、楽しく、あれやこれや、時には間違いながら、なんとか作った、とだけ書いておきます。時間は、正味6時間でした。でも、きっと慣れると2時間でできるでしょう。きっと。そう信じます。たぶん…。
 ただ、子どもでも手伝えることがある作業です。木組みのための材木の加工さえきちんとできていて、体験者がひとりでもいれば、それほど難しい作業ではありません。
 ひとつだけエピソードをご紹介します。
 途中、壁用の板に紐を通すため、木に穴を開けていく作業をしていました。充電式のドリルを使用していたのですが、予想よりも早くバッテリーが切れてしまい、困った、どうしようというとき、みんなの目が、隣で、木質ペレットストーブの点火スイッチ用電力としてデモンストレーションしていた太陽光発電と、大きなバッテリー、インバーターの組み合わせに集まりました。「これで充電できる」。たしかに充電でき、作業は無事に終了。畑地、山間での太陽光発電のありがたみを実感した一瞬でした。

 今回の参加者の中には、日本各地で地域づくりに取り組む人や、海外青年協力隊、海外支援NGOスタッフなどがいて、すべての取り組みが真剣に受け止められていました。この技術は、日本国内、国外をとわず、里地づくり、地域循環型社会づくりに大きなインパクトを与えるという印象を強くしました。
 小川町と、有機農業、自然エネルギーに関わる人たちについては、とにかく、年齢に関係なく、元気で明るくて前向きでパワフルです。「なにか楽しいことを地域でやろう」エネルギーをたっぷり浴びた2日間でした。
 
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里地里山保全活動
0. 里地里山保全活動とは?
1. 秋田県鳥海山/ブナの植林
2. 愛知県美浜町/竹炭焼き
3. 島根県三瓶山/山地放牧と野焼き
4. 長野県飯山市小菅/山の手入れ
5. 三重県鈴鹿市/石組み
6. 山形県最上町/地元学 (小学生版)
7. 岩手県西和賀郡/地元学 (地域版)  
8. 北海道白滝村/水路と有機農業
9. 神奈川県横浜市/ケビンの観察会
10. 埼玉県武蔵野台地/落ち葉掃き
11. 埼玉県小川町/自然エネルギー
12. 新潟県佐渡島新穂村/棚田の復田
13. 秋田県二ツ井町/杉の活用
14. 三重県藤原町/里山テーマパーク
15. 宮城県田尻町蕪栗沼/冬期湛水田
16. 京都府綾部市/ふるさと拠点 
17. 沖縄県恩納損村/かまどづくり
18. 神奈川県横浜市寺家町/ふるさと村
19. 千葉県印西市/都市の里山
20. まとめのシンポジウム
人と自然が織りなす里地環境づくり
トキの野生復帰プロジェクト

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